小野薬品の薬をご使用の方向け情報
悪性胸膜中皮腫の治療でオプジーボを使用された方へ
オプジーボ(一般名:ニボルマブ)は、私たちがもともと持っている免疫の力を回復させることでがんへの攻撃力を高める、これまでとは異なるメカニズムに基づく〝がん免疫療法〟の治療薬です。
悪性胸膜中皮腫の特徴と薬物療法
悪性胸膜中皮腫は、胸膜(肺を覆う薄い膜)の中皮と呼ばれる組織から発生する悪性の腫瘍です。大半がアスベスト(石綿)の曝露によって引き起こされ、長い潜伏期間を経て発症するという特徴があります。
悪性胸膜中皮腫の主な治療法には、手術や放射線による局所的な治療と、お薬を使った全身的な治療である「薬物療法」があります。悪性胸膜中皮腫は、手術による治療が難しい患者さんも多く、薬物療法を中心とした治療が考慮されます。
薬物療法については、〝がんと免疫〟に関する研究が進み、これまでとは異なる作用を持つ「がん免疫療法」が開発され、治療の選択肢が広がりました※。
がん免疫療法の薬は、そのメカニズムから「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれています。

胸膜全書, p254-259, 医薬ジャーナル社, 2013
「がん免疫療法」「免疫チェックポイント阻害薬」について詳細をみる
がん免疫とはオプジーボとは
- ◆ブレーキを外してT細胞の免疫力を回復させ、がん細胞への攻撃を助ける治療薬です。
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オプジーボは、T細胞のPD-1と結合して免疫の働きにブレーキがかからないようにする「免疫チェックポイント阻害薬」です。
オプジーボが血液に入ると、T細胞のPD-1と結びつくことでがん細胞との結合が阻害され、かけられたブレーキが解除されます。
こうしたオプジーボの作用によって、T細胞は、妨害を受けることなく、がん細胞を攻撃できるようになるのです。
オプジーボについて詳細をみる
小野薬品の薬を使用された方へオプジーボ
オプジーボによる治療の対象となる方
◆オプジーボは、悪性胸膜中皮腫の患者さんのうち、手術による治療が難しい患者さん、または再発をきたした方で、抗がん剤による化学療法を受けたことがある患者さんが対象となります。
オプジーボによる治療を受けることができない患者さん
オプジーボに含まれている成分に対して、以前、アレルギー反応(気管支けいれん、全身性の皮膚症状、低血圧など)を起こしたことがある方は、さらに重いアレルギー反応が出る可能性があるため、オプジーボによる治療は受けられません。
オプジーボによる治療を慎重に検討する必要がある患者さん
次のような方は、オプジーボによる治療を受けられないことがあります。
- ◎自己免疫疾患*にかかったことがある方
- ◎間質性肺疾患**にかかったことがある方
- ◎臓器移植(造血幹細胞移植を含む)を受けたことがある方
- ◎結核にかかったことがある(発症する恐れがある)方
*: | 自己免疫疾患 免疫機能が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気で、甲状腺機能異常症や関節リウマチ、1型糖尿病などが自己免疫疾患に含まれます。 |
**: | オプジーボの特に注意すべき副作用をご参照ください。 |
オプジーボ添付文書
治療の進め方と投与方法
◆オプジーボは、30 分以上かけて点滴で投与します。
◆治療スケジュールは、2週間(14 日間)ごとに1回投与する方法と、4週間(28 日間)ごとに1回投与する方法の2種類あります。
治療スケジュールについては、主治医にご確認ください。

オプジーボの特に注意すべき副作用、注意が必要なその他の副作用、ご注意
オプジーボによる治療中には、副作用が現れることがあるので注意が必要です。下記リンクから詳細をご確認ください。
オプジーボ治療Q&A
日常生活で気をつけることはありますか?
オプジーボによる副作用の症状に注意してください
オプジーボによる治療後に以下のような症状が起こることがあります。
症状がみられたら、医療スタッフにご相談ください。
- いつもより疲れやすい(倦怠感)、体重の増減、行動の変化がある(性欲が減る、いらいらする、物忘れしやすいなど)、体がだるい、頭痛、食欲不振
- 甲状腺、下垂体、副腎など内分泌機能異常の確認が必要です。
- 嘔吐、体の痛み、精神状態の変化
- 脳炎の疑いがあります。
- めまい、動悸、脈拍の異常、意識の低下
- 心臓障害の疑いがあります。
- 白斑、白髪
- 肌や髪に脱色がみられることがあります。
- 皮膚や白目が黄色くなる
- 肝障害の疑いがあります。
- 下肢の腫れ、むくみ、痛み、胸痛
- 静脈血栓塞栓症の疑いがあります。
- 尿量が減る、血尿が出る、むくみが強い
- 腎障害の疑いがあります。
- 痰のない乾いた咳が出る、息苦しい、歩行時などに息が切れる
- 間質性肺疾患の可能性があります。症状がみられたら、風邪と思いこまず、ご相談ください。
- 口渇、多飲、多尿
- 1型糖尿病の疑いがあります。
- 血便・黒い便が出る、腹痛を伴う下痢
- 大腸炎、小腸炎の可能性があります。
- 運動のまひ、感覚のまひ、手足のしびれ、手足の痛み
- 神経障害の疑いがあります。
- 皮膚がかゆい、発疹が出る、水ぶくれが出る、ひどい口内炎
- 皮膚障害(重症を含む)の可能性があります。
- 息苦しい、足・腕に力が入らない、ものが二重に見える、筋肉痛
- 重症筋無力症、筋炎、筋肉の融解を起こすことがあります。
- 皮膚にあざができやすい、口や鼻から血が出やすい
- 血小板減少症の可能性があります。
- 咳が続く、痰が出る、寝汗をかく
- 結核に感染している疑いがあります。
医療費が高そうで不安なのですが…
中皮腫の公的支援制度が利用可能か確認してください
中皮腫の大半はアスベスト(石綿)が原因です。アスベストによる健康被害に対しては、大きくわけて2つの支援制度があります。1つは労働者災害補償制度(労災制度)です。建築工事などに関わり、アスベストの粉塵を吸う可能性のある職業についたことのある患者さんはこの制度を利用することができます。もう1つは石綿健康被害救済制度(救済制度)です。アスベストに関連する職業とは無関係で、労災制度などで補償されない場合は救済制度を利用することができます。公的支援制度の申請には医師の診断書を含め、いくつかの資料の提出が必要です。また、それぞれの制度で給付額は異なります。詳しくは、厚生労働省1)または独立行政法人環境再生保全機構2)のホームページをご覧ください。
医療費についてわからないことがあったら、病院の相談窓口にご相談ください。なお、全国にあるがん診療連携拠点病院には、がん相談支援センターがあります。他の病院を受診している方でも利用できますので、お気軽にお問い合わせください。
(2019年11月現在)

- 1)厚生労働省 アスベスト(石綿)情報:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/sekimen/index.html
- 2)独立行政法人環境再生保全機構:https://www.erca.go.jp/asbestos/
オプジーボ治療日記
オプジーボによる治療中、特に気をつけていただきたい症状をチェック項目としてまとめています。
- 監修:
- 独立行政法人労働者健康安全機構 岡山労災病院
腫瘍内科 呼吸器内科 部長
藤本 伸一 先生