6手術について

どのような手術がありますか?

片側の胸膜と肺をまとめて切除する「胸膜肺全摘術きょうまくはいぜんてきじゅつ(EPP)」と、片側の胸膜のみを切除する「胸膜切除きょうまくせつじょ肺剥皮術はいはくひじゅつ(P/D)」があります。

「胸膜肺全摘術(EPP)」は、がんがある片側の胸膜と肺とをまとめて切除する方法です。切除する範囲が広く根治性はやや高いものの、身体への負担が非常に大きく、術後の合併症も比較的多い手術です。
一方、「胸膜切除・肺剥皮術(P/D)」は、片側の胸膜を切除し、肺は残す方法です。こちらは、再発リスクはやや高まりますが、肺が温存されるため生活の質が維持しやすく、胸膜肺全摘術に比べて合併症の発症率も低い手術法です。
患者さんの状態や術後の影響などを十分考慮したうえで、より適した手術法が選択されます。
なお、治療効果を高めるため、患者さんの状態に応じて、手術の前後に化学療法や放射線療法を組み合わせる「集学的治療」が行われます。

※再発することなく完全に治ること
説明する医師と話を聴く患者さん
日本肺癌学会編:患者さんのための肺がんガイドブック2022年版, WEB版
国立がん研究センター 希少がんセンター「悪性胸膜中皮腫」

主な手術の種類と切除範囲

胸膜肺全摘術(EPP)
胸膜肺全摘術(EPP)
がんがある片側の胸膜(壁側、臓側)と肺をまとめて切除する方法です。
胸膜切除・肺剥皮術(P/D)
胸膜切除・肺剥皮術(P/D)
がんがある片側の胸膜(壁側、臓側)を切除し、肺は残す方法です。

悪性胸膜中皮腫に対する手術方法の比較

胸膜肺全摘術
(EPP)
胸膜切除・肺剥皮術
(P/D)
手術可能な病期Ⅰ〜Ⅲ期までⅠ〜Ⅲ期まで
(肺への浸潤が高度な場合は不可)
手術時間6〜8時間6〜10時間
手術によるダメージ非常に大きい大きい
主な合併症不整脈・心不全・気管支断端瘻肺からの空気漏れ
手術関連死亡率5〜10%3〜5%
術後在院日数3〜4週間2〜3週間
術後の生活の質やや不良比較的良好
胸膜中皮腫診療ハンドブック, p132-135, 中外医学社, 2007
インフォームドコンセントのための図説シリーズ肺がん 改訂5版, p44, 医薬ジャーナル社, 2017 より改変
監修:
独立行政法人 国立病院機構 山口宇部医療センター
内科系診療部長 青江 啓介 先生

(2023年6月作成)