6手術について
どのような手術がありますか?
片側の胸膜と肺をまとめて切除する「胸膜肺全摘術 (EPP)」と、片側の胸膜のみを切除する「胸膜切除 ・肺剥皮術 (P/D)」があります。
「胸膜肺全摘術(EPP)」は、がんがある片側の胸膜と肺とをまとめて切除する方法です。切除する範囲が広く根治性※はやや高いものの、身体への負担が非常に大きく、術後の合併症も比較的多い手術です。
一方、「胸膜切除・肺剥皮術(P/D)」は、片側の胸膜を切除し、肺は残す方法です。こちらは、再発リスクはやや高まりますが、肺が温存されるため生活の質が維持しやすく、胸膜肺全摘術に比べて合併症の発症率も低い手術法です。
患者さんの状態や術後の影響などを十分考慮したうえで、より適した手術法が選択されます。
なお、治療効果を高めるため、患者さんの状態に応じて、手術の前後に化学療法や放射線療法を組み合わせる「集学的治療」が行われます。

国立がん研究センター がん情報サービス「 中皮腫」
主な手術の種類と切除範囲
- 胸膜肺全摘術(EPP)
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がんがある片側の胸膜(壁側、臓側)と肺をまとめて切除する方法です。
- 胸膜切除・肺剥皮術(P/D)
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がんがある片側の胸膜(壁側、臓側)を切除し、肺は残す方法です。
悪性胸膜中皮腫に対する手術方法の比較
胸膜肺全摘術 (EPP) | 胸膜切除・肺剥皮術 (P/D) |
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手術可能な病期 | Ⅰ〜Ⅲ期まで | Ⅰ〜Ⅲ期まで (肺への浸潤が高度な場合は不可) |
手術時間 | 6〜8時間 | 6〜10時間 |
手術によるダメージ | 非常に大きい | 大きい |
主な合併症 | 不整脈・心不全・気管支断端瘻 | 肺からの空気漏れ |
手術関連死亡率 | 5〜10% | 3〜5% |
術後在院日数 | 3〜4週間 | 2〜3週間 |
術後の生活の質 | やや不良 | 比較的良好 |

インフォームドコンセントのための図説シリーズ肺がん 改訂5版, p44, 医薬ジャーナル社, 2017 より改変
- 監修:
- 独立行政法人 国立病院機構 山口宇部医療センター
内科系診療部長 青江 啓介 先生