小野薬品の薬をご使用の方向け情報
食道がんの治療でオプジーボを使用された方へ
オプジーボ(一般名:ニボルマブ)は、私たちがもともと持っている免疫の力を回復させることでがんへの攻撃力を高める、これまでとは異なるメカニズムに基づく〝がん免疫療法〟の治療薬です。
食道がんの治療と薬物療法
食道がんの主な治療法には、手術や放射線療法などの局所的な治療と、薬による全身的な治療である「薬物療法」があります。このうち、がんが進行している患者さんや、再発をきたした患者さんについては、それぞれの治療の特長を生かしながら、単独またはいくつかを組み合わせた治療法が選択されます。
薬物療法については、従来の抗がん剤による化学療法に加え、これまでとは異なる作用を持つ「がん免疫療法」が開発され、治療の選択肢がさらに広がりました※。
がん免疫療法の薬は、そのメカニズムから「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれています。

食道がんの進行度や転移など、病期(ステージ)について詳細をみる
病期(ステージ)とはなんですか?どのように決められますか?
「がん免疫療法」「免疫チェックポイント阻害薬」について詳細をみる
がん免疫とはオプジーボとは
- ◆ブレーキを外してT細胞の免疫力を回復させ、がん細胞への攻撃を助ける治療薬です。
-
オプジーボは、T細胞のPD-1と結合して免疫の働きにブレーキがかからないようにする「免疫チェックポイント阻害薬」です。
オプジーボが血液に入ると、T細胞のPD-1と結びつくことでがん細胞との結合が阻害され、かけられたブレーキが解除されます。
こうしたオプジーボの作用によって、T細胞は、妨害を受けることなく、がん細胞を攻撃できるようになるのです。
オプジーボについて詳細をみる
小野薬品の薬を使用された方へオプジーボ
オプジーボ単独療法による治療の対象となる方
◆オプジーボ単独療法は、食道がんの患者さんのうち、次の方が対象となります。
オプジーボによる治療を受けることができない患者さん
オプジーボに含まれている成分に対して、以前、アレルギー反応(気管支けいれん、全身性の皮膚症状、低血圧など)を起こしたことがある方は、さらに重いアレルギー反応が出る可能性があるため、オプジーボによる治療は受けられません。
オプジーボによる治療を慎重に検討する必要がある患者さん
次のような方は、オプジーボによる治療を受けられないことがあります。
- ◎自己免疫疾患*にかかったことがある方
- ◎間質性肺疾患**にかかったことがある方
- ◎臓器移植(造血幹細胞移植を含む)を受けたことがある方
- ◎結核にかかったことがある(発症する恐れがある)方
*: | 自己免疫疾患 免疫機能が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気で、甲状腺機能異常症や関節リウマチ、1型糖尿病などが自己免疫疾患に含まれます。 |
**: | オプジーボの特に注意すべき副作用をご参照ください。 |
オプジーボによる治療方法
◆オプジーボは、30 分以上かけて点滴で投与します。
◆治療スケジュールは、2週間(14 日間)ごとに1回投与する方法と、4週間(28 日間)ごとに1回投与する方法の2種類あります。
治療スケジュールについては、主治医にご確認ください。

オプジーボの特に注意すべき副作用、注意が必要なその他の副作用、ご注意
オプジーボによる治療中には、副作用が現れることがあるので注意が必要です。下記リンクから詳細をご確認ください。
オプジーボ治療Q&A
オプジーボ治療日記
オプジーボによる治療中、特に気をつけていただきたい症状をチェック項目としてまとめています。
用語集
- 原発巣
-
最初にがんになった病変のことを「原発巣」と呼びます。食道がんとは、食道を原発巣とするがんのことです。
再発手術による切除などの方法でがんが一度なくなったあとに、再び増殖したがんが発見されることが「再発」です。再発と転移は同時に見つかることもあります。 - 浸潤
- がん細胞が周囲の組織を壊しながら入り込み、広がっていくことです。転移がん細胞はリンパの流れや血流にのって体内を移動し、流れ着いた先で増殖します。これを「転移」といいます。食道がんは、比較的早い時期からリンパ節に転移しやすく、進行すると、肺、肝臓、骨などに転移することがあります。
- T細胞
- 血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種で、異物から体を守る司令塔となる細胞です。T細胞という名前は、胸腺(thymus)でつくられることから、頭文字のTを取って名付けられています。
- 化学療法
- 抗がん剤(細胞傷害性抗がん剤)を投与して、がん細胞の増殖を抑える治療法です。細胞傷害性抗がん剤とは、主に細胞が分裂する増殖過程に作用して細胞の増殖を阻止する働きがある薬剤をいいます。
- フッ化ピリミジン系製剤
- 化学療法で使われる抗がん剤の一種で「代謝拮抗薬」という種類に属するお薬です。細胞の増殖に必要な「ピリミジン塩基」と呼ばれる成分の代わりに取り込まれることでDNAの合成を阻害し、がん細胞の増殖を抑える働きがあります。食道がんの治療では、多くの場合、プラチナ製剤と組み合わせて用いられます。
- プラチナ製剤
- 貴金属の「プラチナ」と他の成分を合成してつくられた抗がん剤の一種です。「白金製剤」と呼ばれることもあります。がん細胞のDNAと結合し、その分裂を阻止することでがん細胞の増殖を抑える働きがあります。
- 免疫チェックポイント阻害薬
- 免疫チェックポイントと呼ばれている免疫のブレーキ役の部分に結合する抗体(抗PD-1抗体など)を用いて、がん細胞による免疫のブレーキを外し、がん細胞への攻撃力を回復させる治療薬です。
- 術後補助療法
- 手術後に、がんの再発を抑えることを目的に行われる治療をいいます。術後補助療法を行うかどうかは、がんの種類や広がり具合、患者さんの体の状態などをもとに決められます。
国立がん研究センターがん情報サービス「がんに関する用語集/免疫療法/薬物療法/食道がん」
カラー図解人体の正常構造と機能Ⅶ 血液・免疫・内分泌 改訂第2版, 日本医事新報社, 2012
日本臨床腫瘍薬学会編:臨床腫瘍薬学, p28-34,739-741, じほう, 2019
- 監修:
- 国立がん研究センター 中央病院 頭頸部・食道内科/消化管内科
科長(併任) 加藤 健 先生