小野薬品の薬をご使用の方向け情報

悪性黒色腫の治療でオプジーボを使用された方へ

オプジーボ(一般名:ニボルマブ)は、私たちがもともと持っている免疫の力を回復させることでがんへの攻撃力を高める、これまでとは異なるメカニズムに基づく〝がん免疫療法〟の治療薬です。

悪性黒色腫の治療と薬物療法

皮膚がんのうち、皮膚のメラニンという色素をつくる色素細胞(メラノサイト)やほくろの細胞(母斑細胞ぼはんさいぼう)ががん化したものを「悪性黒色腫(メラノーマ)」といいます。
悪性黒色腫の治療は、手術による治療が主体となりますが、手術による治療が難しい場合は、お薬を使った全身的な治療である「薬物療法」が考慮されます。
また、がんの再発をできるだけ防ぐため、手術後にお薬による治療が追加されることもあります(こうした治療を「術後補助療法」といいます)。
薬物療法については、〝がんと免疫〟に関する研究が進み、これまでとは異なる作用を持つ「がん免疫療法」が開発され、治療の選択肢がさらに広がりました※※。こうしたがん免疫療法の薬は、そのメカニズムから「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれています。

※詳しくは 「用語集」をご参照ください。
※※オプジーボによる治療の対象となる方(悪性黒色腫)についてはこちらをご参照ください。
がん免疫療法

日本皮膚科学会/日本皮膚悪性腫瘍学会編:皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第3版 メラノーマ診療ガイドライン2019
国立がん研究センター がん情報サービス「悪性黒色腫(皮膚)/薬物療法 もっと詳しく」

「がん免疫療法」「免疫チェックポイント阻害薬」について詳細をみる

がん免疫とは

オプジーボとは

◆ブレーキを外してT細胞の免疫力を回復させ、がん細胞への攻撃を助ける治療薬です。
オプジーボは、T細胞のPD-1と結合して免疫の働きにブレーキがかからないようにする「免疫チェックポイント阻害薬」です。
オプジーボが血液に入ると、T細胞のPD-1と結びつくことでがん細胞との結合が阻害され、かけられたブレーキが解除されます。
こうしたオプジーボの作用によって、T細胞は、妨害を受けることなく、がん細胞を攻撃できるようになるのです。

オプジーボについて詳細をみる

小野薬品の薬を使用された方へ
オプジーボ

オプジーボによる治療の対象となる方

◆悪性黒色腫では、原則として次の方が対象となります。

  • 手術による治療が難しい患者さん
  • 術後補助療法に用いる場合:
  • 再発リスクが高い患者さん
    (主にステージⅢまたは Ⅳの患者さん)

オプジーボによる治療を受けることができない患者さん

オプジーボに含まれている成分に対して、以前、アレルギー反応(気管支けいれん、全身性の皮膚症状、低血圧など)を起こしたことがある方は、さらに重いアレルギー反応が出る可能性があるため、オプジーボによる治療は受けられません。

オプジーボによる治療を慎重に検討する必要がある患者さん

次のような方は、オプジーボによる治療を受けられないことがあります。

  • ◎自己免疫疾患にかかったことがある方
  • ◎間質性肺疾患**にかかったことがある方
  • ◎臓器移植(造血幹細胞移植を含む)を受けたことがある方
  • ◎結核にかかったことがある(発症する恐れがある)方
*:自己免疫疾患
免疫機能が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気で、甲状腺機能異常症や関節リウマチ、1型糖尿病などが自己免疫疾患に含まれます。
**:オプジーボの特に注意すべき副作用をご参照ください。

オプジーボ添付文書 2022年7月改訂(第15版)

治療の進め方と投与方法

◆オプジーボは、30分以上かけて点滴で投与します。
◆治療スケジュールは、2週間(14日間)ごとに1回投与する方法と、4週間(28日間)ごとに1回投与する方法の2種類あります。
治療スケジュールについては、主治医にご確認ください。

投与スケジュール

オプジーボ添付文書 2022年7月改訂(第15版)より作成

オプジーボの特に注意すべき副作用、注意が必要なその他の副作用、ご注意

オプジーボによる治療中には、副作用が現れることがあるので注意が必要です。下記リンクから詳細をご確認ください。

オプジーボ治療Q&A

オプジーボ治療日記

オプジーボによる治療中、特に気をつけていただきたい症状をチェック項目としてまとめています。

用語集

皮膚がん
「皮膚がん」というのは、特定の病気の名前ではなく、皮膚にできる様々ながんの総称で、悪性黒色腫のほかに「基底細胞がん」「有棘ゆうきょく細胞がん」などがあります。
原発巣
最初にがんになった病変のことを「原発巣」と呼びます。悪性黒色腫は、皮膚だけでなく、メラノサイトが存在する口腔、鼻腔、食道などの粘膜にも生じることがあります。
再発
手術による切除などの方法でがんが一度なくなったあとに、再び増殖したがんが発見されることが「再発」です。再発と転移は同時に見つかることもあります。
転移
がん細胞はリンパの流れや血流にのって体内を移動し、流れ着いた先で増殖します。これを「転移」といいます。悪性黒色腫は、血管を通ってがんが転移する「血行性転移」と、リンパ管を介して転移する「リンパ行性転移」が同時に起きやすいといわれています。
T細胞
血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種で、異物から体を守る司令塔となる細胞です。T細胞という名前は、胸腺(thymus)でつくられることから、頭文字のTを取って名付けられています。
分子標的薬
がん細胞の発生や生存に強く関わっている遺伝子やタンパク質を標的にした薬のことを「分子標的薬」といいます。悪性黒色腫では、BRAFビーラフと呼ばれる遺伝子やMEKメックと呼ばれるタンパク質を標的とした薬が使われます。
免疫チェックポイント阻害薬
免疫チェックポイントと呼ばれている免疫のブレーキ役の部分に結合する抗体(抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体など)を用いて、がん細胞による免疫のブレーキを外し、がん細胞への攻撃力を回復させる治療薬です。
術後補助療法
手術後に、がんの再発を防ぐことを目的に行われる治療のことをいいます(アジュバント療法と呼ばれることもあります)。オプジーボによる術後補助療法は、再発リスクが高い患者さん(主にステージⅢまたはⅣ)が対象となります。

国立がん研究センターがん情報サービス「皮膚がんの分類/がんに関する用語集/薬物療法」
別冊がんサポート「皮膚がん」, 第13巻第10号, p51, エビデンス社, 2015
カラー図解人体の正常構造と機能Ⅶ 血液・免疫・内分泌 改訂第2版, 日本医事新報社, 2012
オプジーボ添付文書 2022年7月改訂(第15版)

監修:
地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター 腫瘍皮膚科 主任部長
爲政 大幾 先生