小野薬品の薬をご使用の方向け情報

食道がんの治療でオプジーボと化学療法の併用療法を受けた方へ

オプジーボ(一般名:ニボルマブ)は、私たちがもともと持っている免疫の力を回復させることでがんへの攻撃力を高める、これまでとは異なるメカニズムに基づく〝がん免疫療法〟の治療薬です。

食道がんの治療と薬物療法

食道がんの主な治療法には、手術や放射線療法などの局所的な治療と、薬による全身的な治療である「薬物療法」があります。このうち、がんが進行している患者さんや、再発をきたした患者さんについては、それぞれの治療の特長を生かしながら、単独またはいくつかを組み合わせた治療法が選択されます。
薬物療法については、従来の抗がん剤による化学療法に加え、これまでとは異なる作用を持つがん免疫療法のお薬「免疫チェックポイント阻害薬」が臨床で使えるようになりました。近年では、免疫チェックポイント阻害薬と化学療法(抗がん剤の治療)を組み合わせた併用療法も登場し、治療の選択肢がさらに広がっています。

※詳しくは 「用語集」をご参照ください。
がん免疫療法

日本食道学会編:食道癌診療ガイドライン2017年版, 金原出版, 2017
国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん」
オプジーボ添付文書2022年7月改訂(第15版)

オプジーボと化学療法による併用療法の対象となる方

◆食道がんの患者さんのうち、手術による治療が難しい、あるいは、再発をきたした患者さんが対象となります。

治療を受けることができない患者さん

オプジーボに含まれている成分に対して、以前、アレルギー反応(気管支けいれん、全身性の皮膚症状、低血圧など)を起こしたことがある方は、さらに重いアレルギー反応が出る可能性があるため、治療を受けることができません。

治療を慎重に検討する必要がある患者さん

次のような方は、オプジーボによる治療を受けられないことがあります。

  • ◎自己免疫疾患にかかったことがある方
  • ◎間質性肺疾患**にかかったことがある方
  • ◎臓器移植(造血幹細胞移植を含む)を受けたことがある方
  • ◎結核にかかったことがある(発症する恐れがある)方
*: 自己免疫疾患
免疫機能が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気で、甲状腺機能異常症や関節リウマチ、1型糖尿病などが自己免疫疾患に含まれます。
**: オプジーボの特に注意すべき副作用をご参照ください。

「がん免疫療法」「免疫チェックポイント阻害薬」について詳細をみる

がん免疫とは

オプジーボとは

◆ブレーキを外してT細胞の免疫力を回復させがん細胞への攻撃を助ける治療薬です。

オプジーボは、T 細胞の PD-1 と結合して免疫の働きにブレーキがかからないようにする「免疫チェックポイント阻害薬」です。
オプジーボが血液に入ると、T 細胞の PD-1 と結びつくことでがん細胞との結合が阻害され、かけられたブレーキが解除されます。
こうしたオプジーボの作用によって、T 細胞は、妨害を受けることなく、がん細胞を攻撃できるようになるのです。

オプジーボについて詳細をみる

小野薬品の薬を使用された方へ
オプジーボ

化学療法(抗がん剤治療)とは

◆がん細胞を直接攻撃する従来型の抗がん剤(細胞障害性抗がん剤)を用いた治療法です。

がん細胞は、細胞分裂を繰り返して異常に増殖します。化学療法で使われる抗がん剤(細胞障害性抗がん剤)は、主にがん細胞の増殖過程に作用して、がん細胞の増殖を阻止する働きがあります。

オプジーボと化学療法の併用療法について詳細をみる

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オプジーボ・化学療法併用療法

オプジーボと併用される抗がん剤

◆化学療法との併用療法では、次の2種類の薬剤が使われます。

オプジーボと併用される抗がん剤
オプジーボ添付文書2022年7月改訂(第15版)

治療の方法と進め方

◆オプジーボを2週間(14日間)ごとに1回投与する方法と、4週間(28日間)ごとに1回投与する方法の2種類あります。化学療法は4週間ごとに1回投与します。

*オプジーボの投与スケジュールについては、主治医にご確認ください。

治療の進め方とスケジュール

オプジーボ添付文書2022年7月改訂(第15版) より作成

◆オプジーボと抗がん剤は、点滴で投与します。
◆1回の治療には、約5日間かかります。

投与時間の目安

オプジーボ添付文書2022年7月改訂(第15版) より作成
※小野薬品工業:国際共同第Ⅲ相(ONO-4538-50/CA209648)試験成績(社内資料)承認時評価資料

注意が必要なその他の副作用、ご注意

オプジーボ・化学療法併用療法による治療は、副作用が現れることがあるので注意が必要です。下記リンクからご確認ください。

オプジーボ・化学療法併用治療 治療日記

オプジーボ・化学療法併用療法による治療中、特に気をつけていただきたい症状をチェック項目としてまとめています。

用語集

再発
手術による切除などの方法でがんが一度なくなったあとに、再び増殖したがんが発見されることが「再発」です。再発と転移は同時に見つかることもあります。
シスプラチン
貴金属の「プラチナ」と他の成分を合成してつくられた抗がん剤の一種で「白金製剤」という種類に属するお薬です。がん細胞のDNA と結合し、その分裂を阻止することでがん細胞の増殖を抑える働きがあります。
T細胞
血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種で、異物から体を守る司令塔となる細胞です。T細胞という名前は、胸腺(thymus)でつくられることから、頭文字のTを取って名付けられています。
免疫チェックポイント阻害薬
免疫チェックポイントと呼ばれている免疫のブレーキ役の部分に結合する抗体(抗PD-1抗体など)を用いて、がん細胞による免疫のブレーキを外し、がん細胞への攻撃力を回復させる治療薬です。
化学療法
抗がん剤(細胞障害性抗がん剤)を投与して、がん細胞の増殖を抑える治療法です。細胞傷害性抗がん剤とは、主に細胞が分裂する増殖過程に作用して細胞の増殖を阻止する働きがある薬剤をいいます。
1型糖尿病
主に自己免疫によっておこる病気で、自分の体のリンパ球が膵臓にある膵島β細胞を破壊してしまうことで発病する病気です。遺伝的な要因に運動不足や食べ過ぎなどの生活習慣が加わって発症する「2型糖尿病」とは発症原因が異なります。
フルオロウラシル
化学療法で使われる抗がん剤の一種で「代謝拮抗薬」という種類に属するお薬です。細胞の増殖に必要な「ピリミジン塩基」と呼ばれる成分の代わりに取り込まれることでDNAの合成を阻害し、がん細胞の増殖を抑える働きがあります。
アナフィラキシー
アレルギーの原因になる物質が侵入することで引き起こされる全身的なアレルギー反応をいいます。全身の発疹やかゆみ、呼吸困難などの症状が急速に現れ(数分~数時間以内)、重症になると生命に危険が及ぶこともあるため、迅速な対応が必要となります。

国立がん研究センター がん情報サービス「がんに関する用語集/免疫療法/薬物療法/食道がん」
カラー図解人体の正常構造と機能Ⅶ 血液・免疫・内分泌 改訂第2版, 日本医事新報社, 2012
日本臨床腫瘍薬学会編:臨床腫瘍薬学, p28-34, 739-741, じほう, 2019

監修:
国立がん研究センター 東病院 消化管内科
医長 小島 隆嗣 先生