8薬物療法

薬物療法による副作用には、どのようなものがありますか?

副作用の種類や程度は、薬剤の種類や量によって異なります。
治療中や治療後にいつもと違う症状を感じたら、医師や看護師、薬剤師にすぐに連絡しましょう。

【分子標的薬】
肝細胞がんで使用される分子標的薬の主な副作用

  • 食欲不振、貧血、薬剤注入に伴う反応、心機能の低下、高血圧、下痢、頭痛、手足症候群、鼻出血、疲労、甲状腺機能障害などがあります。

〈高血圧への対処法〉

  • 日々の血圧を家庭でも測定し、血圧が上昇していた場合、降圧剤を飲んで血圧をコントロールします。

〈手足症候群への対処法〉

  • 手のひらや足裏に、発赤・疼痛・水疱などの皮膚症状が現れます。保湿剤や塗り薬の使用、靴下や手袋の着用などで対処や予防を行いましょう。
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〈薬剤注入に伴う反応への対処法〉

  • 薬剤の投与から24時間以内に起こる過敏症です。投与中やその後の体調の変化があった場合、すぐに医師や医療スタッフに伝えましょう。

【免疫チェックポイント阻害薬】
肝細胞がんで使用される免疫チェックポイント阻害薬の主な副作用

  • 疲労感、悪心(吐き気)、発疹、そう痒症(かゆみ)、食欲減退、下痢、貧血などがあります。まれではありますが、肺の壁が厚く硬くなり伸び縮みしにくくなることで空気(酸素)の取り入れが難しくなる間質性肺疾患、大腸炎、甲状腺機能障害など、免疫の活性化に伴う副作用が生じることも報告されています。副作用がみられた場合は、状況に応じて、免疫チェックポイント阻害薬を休薬したり、ステロイド薬の投与が行われることがあります。
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〈免疫関連の副作用ー間質性肺疾患への対処法〉

  • とくに注意が必要な副作用として、間質性肺疾患が報告されています。特徴的な症状は、息切れ、息苦しさ、発熱、痰のない乾いた咳、疲労などです。風邪の症状と似ていますが、早めの対応が非常に重要ですので、気になる症状が現れた場合は、すぐに医師や医療スタッフに連絡しましょう。
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〈免疫関連の副作用ー下痢への対処法〉

  • 免疫チェックポイント阻害薬による下痢は、抗がん剤や分子標的薬でみられる下痢とは対処法が異なります。下痢が続く場合は、すぐに医師や医療スタッフに連絡しましょう。
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医療情報科学研究所 編「薬がみえるvol.3 第2版」p380, 421, メディックメディア, 2023.
遠藤一司ほか 編「改訂第7版がん化学療法レジメンハンドブック」p608-616, 622-629, 羊土社, 2022.
日本臨床腫瘍学会 編「がん免疫療法ガイドライン 第3版」p38-41, 48-50, 58-60, 金原出版, 2023.
日本バイオセラピィ学会 編「よくわかるがん免疫療法ガイドブックー患者さんとご家族のために 第2版」
p17-20, 34-35, 38-39, 金原出版, 2023.
監修:
日本赤十字社 武蔵野赤十字病院 院長
黒崎 雅之 先生

(2025年6月作成)