あなたと一緒に、がんと向き合う

小野薬品の薬をご使用の方向け情報

胸膜を除く悪性中皮腫の治療でオプジーボを使用された方へ

悪性中皮腫の特徴と薬物療法

悪性中皮腫は、胸膜きょうまく腹膜ふくまく 心膜しんまく精巣鞘膜せいそうしょうまく など、臓器を覆っている薄い膜の中皮細胞から発生する悪性腫瘍(がん)をいいます。悪性中皮腫はアスベスト(石綿)の曝露によって引き起こされることがあり、長い潜伏期間を経て発症するという特徴があります。しかし、アスベストとの因果関係が不明なこともあります。
腹膜や心膜、精巣漿膜を原発部位とする悪性中皮腫は、手術や放射線による治療の効果は限定的とされています。このため、多くの患者さんでは薬物療法を中心とした治療が考慮されます。
薬物療法については、〝がんと免疫〟に関する研究が進み、これまでとは異なる作用を持つ「がん免疫療法」が開発され、治療の選択肢が広がりました※※
がん免疫療法の薬は、そのメカニズムから「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれています。

アスベスト(石綿)については「用語集」をご参照ください。 ※※オプジーボによる治療の対象となる方【悪性中皮腫(悪性胸膜あくせいきょうまく中皮腫ちゅうひしゅを除く)】についてはこちらをご参照ください。
がん免疫療法
Gemba K,et al.Cancer Science, 103(3), 483-490, 2012
国立がん研究センター がん情報サービス「悪性中皮腫の分類」
国立がん研究センター 希少がんセンター「悪性腹膜中皮腫/悪性心膜中皮腫/悪性精巣鞘膜中皮腫」

「がん免疫療法」「免疫チェックポイント阻害薬」について詳細をみる

がん免疫とは

オプジーボとは

◆ブレーキを外してT細胞の免疫力を回復させ、がん細胞への攻撃を助ける治療薬です。
オプジーボは、T細胞のPD-1と結合して免疫の働きにブレーキがかからないようにする「免疫チェックポイント阻害薬」です。
オプジーボが血液に入ると、T細胞のPD-1と結びつくことでがん細胞との結合が阻害され、かけられたブレーキが解除されます。
こうしたオプジーボの作用によって、T細胞は、妨害を受けることなく、がん細胞を攻撃できるようになるのです。

オプジーボについて詳細をみる

小野薬品の薬を使用された方へ
オプジーボ

オプジーボによる治療の対象となる方

◆オプジーボによる治療は、悪性中皮腫悪性胸膜あくせいきょうまく中皮腫ちゅうひしゅを除く)と診断された患者さんが対象となります。

腹膜ふくまく心膜しんまく精巣鞘膜せいそうしょうまくを原発部位とする悪性中皮腫

オプジーボによる治療を受けることができない患者さん

オプジーボに含まれている成分に対して、以前、アレルギー反応(気管支けいれん、全身性の皮膚症状、低血圧など)を起こしたことがある方は、さらに重いアレルギー反応が出る可能性があるため、オプジーボによる治療は受けられません。

オプジーボによる治療を慎重に検討する必要がある患者さん

次のような方は、オプジーボによる治療を受けられないことがあります。

  • ◎自己免疫疾患にかかったことがある方
  • ◎間質性肺疾患**にかかったことがある方
  • ◎臓器移植(造血幹細胞移植を含む)を受けたことがある方
  • ◎結核にかかったことがある(発症する恐れがある)方
*:自己免疫疾患
免疫機能が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気で、関節リウマチや1型糖尿病などが自己免疫疾患に含まれます。
**:オプジーボの特に注意すべき副作用をご参照ください。
オプジーボ電子添文 2023年11月改訂(第19版)

治療の進め方と投与方法

◆オプジーボは、30分以上かけて点滴で投与します。
◆治療スケジュールは、2週間(14日間)ごとに1回投与する方法と、4週間(28日間)ごとに1回投与する方法の2種類あります。

治療スケジュールについては、主治医にご確認ください。

治療のスケジュールと進め方
オプジーボ電子添文 2023年11月改訂(第19版)

オプジーボの特に注意すべき副作用、注意が必要なその他の副作用、ご注意

オプジーボによる治療中には、副作用が現れることがあるので注意が必要です。下記リンクから詳細をご確認ください。

治療終了後の注意点

◆副作用は、治療期間中だけでなく、治療終了後にも現れることがあります。

副作用が発現しても、早期に見つけて適切な対処を行えば、重症化を防ぐことにつながります。治療が終わったあとも、気になる症状が現れた場合はご自分で対処せず、すぐに医師や看護師、薬剤師に連絡してください。

◎適切な治療のために

「オプジーボ連絡カード」

  • オプジーボによる治療を受けている(受けていた)ことを医療者に知らせる携帯用のカードです。
  • 他の病院を受診したり薬局でお薬を処方してもらう際は、このカードを必ずご提示ください。財布などに入れて常に携帯しておきましょう。
オプジーボ連絡カード

「おくすり手帳シール」

  • おくすり手帳に貼っておくことで、医療者に副作用への注意や相互作用の確認などを促すシールです。
  • 確認しやすいページに貼ってお使いください。
おくすり手帳シール

緊急時の病院への連絡について

◆緊急受診が必要になった場合に備えて次の点を確認しておきましょう。

オプジーボの治療期間中や治療後に、病院への緊急連絡や緊急受診が必要になることがあるかもしれません。そのための備えとして、次の点を確認しておきましょう(緊急連絡先の電話番号は、目につくところに置いておくことも大切です)。

◎緊急連絡・受診の備えとして確認しておきたいこと

  • 病院の連絡先(夜間の連絡先)の電話番号
  • 病院に向かうための交通手段
  • 付き添いが必要な場合の支援方法と連絡先
連絡する患者さんのイラスト

◎病院に連絡する際に伝えておきたいこと

  • 患者さんの氏名、診察券の番号
  • 通院している診療科
  • オプジーボによる治療を受けている(受けていた)こと
  • いつから、どのような症状が出ているのか
  • その症状で、どんなことに困っているか

オプジーボ治療日記

オプジーボによる治療中、特に気をつけていただきたい症状をチェック項目としてまとめています。

オプジーボ治療Q&A

◎医療費が高そうで不安なのですが…

中皮腫の公的支援制度が利用可能か確認してください

中皮腫の発症には、アスベスト(石綿)が関与していることが知られています。アスベストによる健康被害に対しては、大きくわけて2つの支援制度が設けられています。1つは労働者災害補償制度(労災制度)です。建築工事などに関わり、アスベストの粉塵を吸う可能性のある職業についたことのある患者さんはこの制度を利用することができます。
もう1つは石綿健康被害救済制度(救済制度)です。アスベストに関連する職業とは無関係に、労災制度などで補償されない場合に利用することができます。制度の申請には医師の診断書を含め、いくつかの資料の提出が必要です。また、給付額は利用する制度によって異なります。詳しくは、厚生労働省1)または独立行政法人環境再生保全機構2)のホームページをご覧ください。
医療費についてわからないことがあったら、病院の相談窓口にご相談ください。全国にあるがん診療連携拠点病院には、がん相談支援センターがあります。他の病院を受診している方でも利用できますので、お気軽にお問い合わせください。
(2023年10月現在)

治療費の相談をする患者さんのイラスト
  1. 1)厚生労働省 アスベスト(石綿)情報:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/sekimen/index.html
  2. 2)独立行政法人環境再生保全機構「アスベスト(石綿)健康被害の救済」:https://www.erca.go.jp/asbestos/

用語集

原発部位
最初にがんが発生した場所(器官)のことを「原発部位」といいます。悪性中皮腫は胸膜、腹膜、心膜、精巣漿膜を原発部位に発生します。割合は胸膜から発生する中皮腫が85%~90%と最も多く、腹膜から発症するものは10~15%、心膜や精巣鞘膜から発症する中皮腫はそれぞれ1%未満と大変まれです。
アスベスト(石綿)
繊維状の天然の鉱物。丈夫で変化しにくいという特徴があるため、建築資材をはじめ、様々な工業製品に使用されていました。しかしアスベストの曝露が、悪性中皮腫など深刻な健康被害を引き起こす原因となることから製造等が禁止されています。
潜伏期間
アスベストの曝露から発症までの期間を「潜伏期間」と呼びます。アスベストの繊維は丈夫で変化しにくいため、体内の組織に長く留まります。その結果、長期間にわたり組織が傷つけられることで遺伝子変異が起こり、がん細胞が発生すると考えられています。悪性中皮腫は、非常に長い潜伏期間(平均40年ほど)を経て発病することが多いとされています。
T細胞
血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種で、異物から体を守る司令塔となる細胞です。T細胞という名前は、胸腺(thymus)でつくられることから、頭文字のTを取って名付けられています。
免疫チェックポイント阻害薬
免疫チェックポイントと呼ばれている免疫のブレーキ役の部分に結合する抗体(抗PD-1抗体など)を用いて、がん細胞による免疫へのブレーキを外し、がん細胞への攻撃力を回復させる治療薬です。
1型糖尿病
主に自己免疫によっておこる病気で、自分の体のリンパ球が膵臓にある膵島β細胞を破壊してしまうことで発病する病気です。遺伝的な要因に運動不足や食べ過ぎなどの生活習慣が加わって発症する「2型糖尿病」とは発症原因が異なります。
アナフィラキシー
アレルギーの原因になる物質が侵入することで引き起こされる全身的なアレルギー反応をいいます。全身の発疹やかゆみ、呼吸困難などの症状が急速に現れ(数分~数時間以内)、重症になると生命に危険が及ぶこともあるため、迅速な対応が必要となります。

Gemba K,et al.Cancer Science, 103(3), 483-490, 2012
国立がん研究センター がん情報サービス「がんに関する用語集/悪性中皮腫の分類/悪性腹膜中皮腫/免疫療法」
カラー図解人体の正常構造と機能Ⅶ 血液・免疫・内分泌 改訂第4版, p32,日本医事新報社, 2021
日本糖尿病学会編:糖尿病診療ガイドライン2019, p10-11, 南江堂,2019
厚生労働省ホームページ「アスベスト(石綿)に関するQ&A」:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/sekimen/topics/tp050729-1.html
日本臨床腫瘍薬学会編:臨床腫瘍薬学 第2版, p731-740, じほう, 2022

監修:
独立行政法人労働者健康安全機構
岡山ろうさい病院 腫瘍内科 呼吸器内科
部長 藤本 伸一 先生

(2023年11月作成)