治療後

孤独を感じるとき
〜68歳男性 胃がんの場合〜

BBさん:68歳 男性 胃がん・ステージⅢ
妻と年金二人暮らし。独立した一男二女がいる。

3年前に胃がんと診断され、切除術と術後補助療法を完遂。ダンピング症候群も何とか収まり、一見普通の生活が戻ってきました。

※ダンピング症候群:胃切除後、これまで胃の中を通っていた食べ物が直接腸に流れ込むために起こります。主な症状としてめまい、動悸(どうき)、発汗、頭痛、手指の震えなどがあります1)

68歳男性

「不安を家族にも相談できない…」

「再発したらどうしようとずっと不安なんですよ。辛い時期を支えてくれた家内や子どもたちには感謝しています。でも、3年も過ぎると“もう、大丈夫でしょう?”とそれぞれに忙しそうで…。家族と一緒に笑っていても、ふとした瞬間に“この不安はわかってもらえないだろうな”と思うと、皆が急に遠くなったように感じるんですよね」(BBさん)。

孤独を感じたときは、サイコオンコロジストなどに相談してみましょう

当たり前のことですが、がん患者さんは治療が一段落した後も折に触れ、再発の不安を抱えています。しかし、“そんな話をして周りを暗くさせても…”と気遣ったり、“どうせわかってもらえないだろう”と決めつけて気持ちを打ち明けないでいたりすることがあります。しかし、気持ちに無理に蓋をすると、別のところに負担が出てきたりもします。

「言わなくても、察してほしい」という思いもあるかもしれませんが、言葉にならないもやもやを言葉にすることで落ち着く面もあります。素直な気持ちを話してみてください。もしかすると家族もあなたに心配をかけまいとして、不安を抑えているかもしれません。もしも、身近な人に気持ちを打ち明けるのに戸惑われるときは、心のケアを専門とするサイコオンコロジスト(精神腫瘍医)や、定期通院中の病院やがん診療拠点病院のスタッフなどに話しましょう。親身に相談にのってくれるはずです。

「こんなことを医療者に話してもいいの?」とためらう方もいらっしゃるかもしれませんが、心が辛いときは専門家に助けを求めるべきです。健康保険も適用されますので、一人で悩まず気軽に相談してください。

また、余裕があれば、がん体験者によるボランティアや、病院の患者会のイベント運営を手伝うなど、何らかの役割を引き受けてみるのもよいかもしれません。同じがんの体験をされている方を支援していく間に親しい人間関係ができ、世間から切り離されたような感覚が消えていくと思います。また、あなたの経験がほかのがん体験者に活かされることで、社会に貢献しているという充足感が少しずつ戻ってくることもあります。

患者会のイベント運営を手伝う
1)国立がん研究センターがん情報サービス ダンピング症候群
(2023年2月21日閲覧、https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/dumping_syndrome.html
監修:
国立がん研究センター東病院 精神腫瘍科
科長 小川 朝生 先生

(2023年4月作成)

孤独を感じるとき