診断・告知

家族への周知の悩み
~53歳女性 卵巣がんの場合~

Fさん:53歳 女性
会社員。がんと診断され、開腹術を受けることになる。
独身一人暮らしで、遠方の実家に70代の母親が一人暮らしをしている。

お腹の張りや食欲不振が続いていたFさん。消化器の病気かと思い、消化器内科を受診したところ、超音波検査で卵巣がんが疑われたことから同じ病院で精密検査を受けました。その結果、卵巣内の病巣が確認され、開腹術を受けることになりました。

53歳女性

「離れて暮らす母親に伝えるべきか、悩んだ」

「“卵巣がんです。病期は開腹してみなければ……”と、言われたときには頭がぼーっとして何も考えられませんでした。入院までの段取りを聞きながら、頭の片隅では“母になんて話そう”とばかり考えていました」(Fさん)。

同居する家族の間では、大事なことほど隠さないほうが望ましいと思いますが、遠方に住んでいるご両親や兄弟姉妹についてはどうでしょうか。がんのステージが早期で治療期間が短い場合は、治療が終了してから報告するという選択肢もあるでしょう。

一方、進行がんの治療は年単位で考えることが当たり前です。定期的な通院や検査もそうですし、もし転移・再発が見つかった場合は治療を再開する必要が出てきます。親御さんが何かを察する状況があるかもしれません。

「隠し事」や「問いかけを我慢する」状況が続くほど、お互いの負担になります。できれば先の見通しが立った段階で、徐々に伝えるようにするとよいのではないでしょうか。

遠方ならまずは電話で話しましょう。親にも受け入れる時間が必要です

親御さんと同居している場合は、顔を合わせて直接、話をするとよいと思いますが、遠方に住んでいる親御さんには、電話で知らせることが一般的だと思います。親御さんは居ても立っても居られず「すぐに行くから!」と言い出すかもしれません。そんなときは「自分でもまだ整理ができていないから、落ち着くまで来ないでほしい」と率直に気持ちを伝え、一旦電話を切ってもよいでしょう。お互いに状況を受け入れて、気持ちを整理する時間をとることが大切です。

遠方ならまずは電話

そして次に電話をする際は、具体的に何かをしてほしいという希望を伝えるようにしてみてください。「食事の支度が大変だから、冷凍食品を送って」でもよいのです。小さなことでもあなたのために何かができるという安心感が、親御さんの不安や恐れを鎮めてくれるはずです。

もしかすると、電話越しに病気のことや治療のことを理解してもらうことは難しいかもしれません。電話の向こうで大泣きをされて「泣きたいのはこっちだよ」と思ったり、「大丈夫よ」と簡単に言われてしまい「何がわかるの?」と傷ついたりすることもあるでしょう。そういう場合は、親御さんも不安を否定したいのだと受け止めながら、一旦距離を置くことも必要だと思います。

親にとって、いくつになっても子どもの病気は辛いものです。特に母親は「がんになりやすい体質に産んで(育てて)しまった」と責任を感じることもあります。もし親御さんの落ち込みが強いようであれば、がん相談支援センターの窓口に電話をかけるように勧めてもよいでしょう。患者さんのご家族に対しても精神的な支えになってくれるはずです。

監修:
埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター 精神腫瘍科
教授 大西 秀樹 先生

(2023年4月作成)

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