診断・告知

がんだと告げられて思うこと
~45歳男性 肝臓がんの場合~

Cさん:45歳 男性
会社員。肝炎ウイルス感染から慢性肝炎、肝細胞がんを発症。妻、子供2人(小学生と幼稚園)と住んでいる。

肝細胞がん(肝臓がん)の主な発症原因は、肝炎ウイルスの持続感染です。Cさんは会社の健康診断でウイルス感染がわかり、確定診断後に肝炎に対するさまざまな治療を受けました。こうした背景から肝臓がんの発症はある程度予想されており、定期的な検査で早期に発見することもできました。しかし、がん化が確定した後でCさんは予想外の激しい怒りと抑うつに襲われたのです。

45歳男性

「どうして僕なんだろう、何か悪いことをしたんだろうか」

「がんばって肝炎の治療をしてきたのに、肝臓がんになってしまった。なぜなんだろう。何か悪いことをしたんだろうか。このまま病気が進んでしまって、もし自分がいなくなったら…」(Cさん)。

2人に1人ががんになる時代だとはいえ、多くの人は「自分には関係がない」と心のどこかで考えています。確かに肝炎ウイルスの持続感染があっても、すべての方が肝臓がんを発症するとは限りません。しかしCさんは肝炎に対する治療を受けたにもかかわらず、肝臓がんを発症し、その衝撃はとても大きいものでした。

「悪い状況」を受け入れるまで、心は大きく動揺します。「なぜ、自分がこんな目に」という理不尽な状況に対する怒りや「そんなはずはない」という否定、「もし、あのときにこうしていれば」という後悔や自分を責める気持ちなどさまざまな感情が噴き出してきます。また、Cさんのように「妻や子供たちはどうなるんだろう」という将来への強い不安から、抑うつ状態に陥ることもあります。

がんと伝えられた方が不安や絶望に陥るのは、ある意味では自然な反応です。ただ、怒りや無力感が頭から離れず、眠れない夜や食べられない日々が続くようであれば、病院の中で相談ができる人、例えば担当医や医療相談室の相談員に話をしてみることも大切です。ときには話をするだけでも心が落ち着いてくることがあります。また、場合によっては心の専門家を紹介してもらってもよいでしょう。怒りや絶望感をため込まず言葉にして吐き出してみましょう。

SOSを出すことは弱さではありません。必要なときに助けを求められる人は、しなやかな強さを持っている人なのだということをぜひ、知っておいてください。

家計の心配
監修:
埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター 精神腫瘍科
教授 大西 秀樹 先生

(2023年4月作成)

がんだと告げられて思うこと