「どうして僕なんだろう、何か悪いことをしたんだろうか」
「がんばって肝炎の治療をしてきたのに、肝臓がんになってしまった。なぜなんだろう。何か悪いことをしたんだろうか。このまま病気が進んでしまって、もし自分がいなくなったら…」(Cさん)。
2人に1人ががんになる時代だとはいえ、多くの人は「自分には関係がない」と心のどこかで考えています。確かに肝炎ウイルスの持続感染があっても、すべての方が肝臓がんを発症するとは限りません。しかしCさんは肝炎に対する治療を受けたにもかかわらず、肝臓がんを発症し、その衝撃はとても大きいものでした。
「悪い状況」を受け入れるまで、心は大きく動揺します。「なぜ、自分がこんな目に」という理不尽な状況に対する怒りや「そんなはずはない」という否定、「もし、あのときにこうしていれば」という後悔や自分を責める気持ちなどさまざまな感情が噴き出してきます。また、Cさんのように「妻や子供たちはどうなるんだろう」という将来への強い不安から、抑うつ状態に陥ることもあります。
がんと伝えられた方が不安や絶望に陥るのは、ある意味では自然な反応です。ただ、怒りや無力感が頭から離れず、眠れない夜や食べられない日々が続くようであれば、病院の中で相談ができる人、例えば担当医や医療相談室の相談員に話をしてみることも大切です。ときには話をするだけでも心が落ち着いてくることがあります。また、場合によっては心の専門家を紹介してもらってもよいでしょう。怒りや絶望感をため込まず言葉にして吐き出してみましょう。
SOSを出すことは弱さではありません。必要なときに助けを求められる人は、しなやかな強さを持っている人なのだということをぜひ、知っておいてください。