あなたと一緒に、がんと向き合う
治療の選択

経済と就労の悩み
~43歳女性 乳がんの場合~

Lさん:43歳 女性 乳がん・ステージⅡb
情報誌の編集者。術後化学療法を受け、副作用として嘔吐が発現した。
夫、中学生の息子2人と住んでいる。

乳がんが見つかり、乳房全摘+リンパ節郭清を経て、現在は術後化学療法として抗がん剤で治療中。外来で治療できるので休職はしませんでしたが、点滴投与当日〜翌日は吐き気が激しく制吐剤を服用しても、吐き続ける状態でした。

43歳女性

主治医に仕事内容を理解してもらい、治療スケジュールを組みましょう

「これからは子ども達に教育費もかかるし、私の治療費もかかります。絶対に仕事を辞めたくはありませんでした。副作用は予想以上に辛かったのですが、時短勤務などで対応してもらいました。編集者は柔軟な働き方ができることが幸いした面はありますが、フォローしてくれた職場のみんなには本当に感謝しています」(Lさん)。

最近は手術後の抗がん剤治療を外来通院で行うケースが増え、時短勤務制度や時差出勤などを利用して働きながら治療を受けられるようになりました。ただ、同じ薬を使ったとしても副作用の現れ方は千差万別です。「意外に楽だった」という方もいれば、「副作用が辛すぎて、しまいには病院の建物を見るだけで吐いてしまった」という方もいます。仕事をどう続けていくかも体調や個々人の状況で違ってくるでしょう。こんなときはまず、主治医に相談してください。

実は、主治医はあなたの仕事の内容をよく知りません。「事務職です」「販売です」という漠然とした話ではなく、例えば「重い物を持つ必要がある」「スーパーで惣菜を売っている」「接客業で外見が気になる」など、具体的に話をしてみましょう。

抗がん剤の副作用には投薬直後に生じやすいもの(吐き気やだるさ)、何日か後に出てくるもの(手足のしびれや貧血)など一定のパターンがあります。仕事の内容と副作用の出現パターンを考慮しながら治療のスケジュールを組むほか、職場に対してわかりやすい言葉で副作用の説明をする手助けを主治医にしてもらってください。ここに書いた副作用の内容は、ほんの一例です。ご自身の治療については、ぜひ主治医や看護師、薬剤師に相談してみてください。

Lさんの投薬スケジュールは3週間に1回投与×4クールだったので、主治医と相談のうえ金曜日を1クールの投薬の日とし、土日は自宅で安静に、月曜日は午後から出勤というスケジュールとしました。「“次の投与の直前であれば副作用も治まって、体調や気分もそこそこ良いでしょう”と主治医が言うので、投薬前日付近に出張や家族との外食の予定を入れたりしていました」(Lさん)。また長時間の編集会議が辛いのでネット会議を取り入れてもらったところ、思いがけず好評で、皆が普通に利用するようになったそうです。

無理をせず、周りに助けてもらいましょう

普段から、他人に助けてもらう必要があっても「迷惑をかけたくない」と、思い込みがちになる方も多いのではないでしょうか。でも、いつかは誰もが「迷惑をかける側」になります(赤ちゃんのときだってそうです)。人生、持ちつ持たれつなのです。確かに心ない言葉を口にする人も中にはいるでしょう。自分自身も敏感になっているので、いつもなら聞き流せる言葉に傷つき、やっぱり自分は辞めるべきだ、と思うかもしれません。

ネガティブな思いに沈んでしまったときには「ありがとう」「いつも助かります」と声をかけてみてください。自分の心も少し明るくなると思います。嫌なことを言われたら「この人も自分と同じで、何か不安と闘っているんだろうな」と理解するとよいかもしれません。仕事の量を減らしてもらって「申し訳ない」と思うのであれば、なおさら目の前の仕事を丁寧にこなしていきましょう。

そして無理のない範囲で、自分の体調の波に対する“事前準備”をしましょう。吐き気止めを用意しておく、アクシデントを想定して時間的に余裕をみておく、10分でも15分でも仮眠をとりできるだけ身体を休める、早めに「助けてほしい」と同僚に伝えるなどを心がけておくと、少しずつ「やっていける!」と思えることが増えてきます。周囲も普通にあなたの状態を受け入れてくれるはずです。そうして日々を過ごしていくうちに、ゆっくりとですが「今の自分」のままで生きる自信を取り戻すことができると思います。

来月は同僚に助けてもらおう
監修:
埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター 精神腫瘍科
教授 大西 秀樹 先生
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