自分だけぽつんと取り残された気持ちに
がん医療の進歩で、がんとともに「生きる」ことが当たり前といわれる時代になりました。しかし、「がん=死」というイメージが根強く残っているため、生活基盤である仕事を失ったり、過剰に反応されるのが怖くて交友関係を絶ってしまったりすることもあるようです。このため、病名を周囲に打ち明けられない方はたくさんいらっしゃいます。
一般にがん患者さんは診断された直後から「自分はもう健康なみんなと同じではない」といった、集団から切り離されたような孤独を感じるといわれています。仲の良い友人や家族が周囲にいたとしても、こうした孤独感をうまく解消することは難しいようです。むしろ「○○なら、がんになんて負けないよ」「前向きに考えようよ」などの励ましに傷つき、親しい人にも理解してもらえない辛さを募らせてしまうこともあります。
特に、AYA世代(Adolescent and Young Adult:思春期および若年成人で15~29歳)と呼ばれる若い患者さんは同世代のがん体験者(がんと診断された方や治療・経過観察中の方なども含むがん体験者)が少ないこともあり、世間から一人取り残されたように感じて自ら壁をつくってしまうことがあります。
同じ経験をしている仲間を探しましょう
もし、あなたが「ひとりぼっちだ」と感じているのなら、仲間をたずねてみませんか。仲間とは、がんの苦しみや痛み、孤独を分かち合えるがん体験者のことです。一見、周りにいなくても全国にまでに視野を広げれば同じがん種のAYA世代の方に会えると思います。健康な人たちには話せないことも、同じ経験をくぐり抜けてきた、またはこれから経験するだろう仲間の前でなら言葉にすることができると思います。自身の経験を分かち合うことで、誰かの救いになることもあるはずです。
こうした仲間同士の支え合いを「ピア(仲間)・サポート」といい、患者会やがん患者サロンなどで同じ病気を持つ患者さん同士が語り合う交流を指します。もし、病院主催の患者会に同世代がいなくて足が向かない場合は、SNSでコミュニティを探してみたり、全国的に活動をしている患者団体の支部が主催しているミーティングに参加したりしてみましょう。公益財団法人日本対がん協会が主催しているがん患者さんとそのご家族を支援するチャリティー活動「リレー・フォー・ライフ」※ に参加してみるのも一つの扉を開くきっかけになるかもしれません。
ページの下に患者会についての情報源を載せましたので、ぜひ参考にしてください。
※リレー・フォー・ライフ:1985年に米国の一人の医師が陸上のトラックを24時間走り続けました。これは「がん患者は24時間、がんと向き合っている」という想いを共有し支援するための募金活動でした。この理念を引き継ぎ、夜通し歩くリレーイベントでは、がん患者さんやそのご家族、支援者、医療従事者、学生などでチームを作り、夜通しトラックを歩き続けます(ともに歩き、語らうことで生きる勇気と希望を生み出そうとするイベント)。現在世界およそ30ヵ国、4500ヵ所で開催されています。
監修:
国立がん研究センター東病院 精神腫瘍科 科長 小川 朝生 先生