- Nさん:60歳 男性 胃がん・ステージⅡa
- 会社員。胃の上部にがんが認められ、胃の全摘を勧められる。
配偶者と二人暮らし。
会社の集団検診で胃の病変を指摘されたNさん。市中病院を紹介されて精密検査を受けた結果、早期がん(ステージⅡa)と診断。根治を目的として胃全摘術を勧められました。
セカンドオピニオンは、患者の「当然の権利」です
「実は同僚が胃を全部とって、ダンピング症候群※や、胆汁と膵液の逆流で苦しんでいたんですよ。みるみる痩せちゃって……」(Nさん)。同僚の辛い様子を目の当たりにしていたNさんは、少しでも胃を残したいと考え、セカンドオピニオンを受けることにしました。
Nさんの住んでいるところは、大きな病院が1つしかない田舎なので、インターネットで胃の機能温存に力を入れている病院を探しました。結果、ちょっと高額でしたが(セカンドオピニオンは自費診療です)、消化器がんの治療で有名な東京の病院を受診してみることにしました。
病院を決めて主治医にセカンドオピニオンに必要な紹介状などをお願いすると、あまり歓迎という雰囲気ではなかったとのことですが、セカンドオピニオンは患者さんの「当然の権利」です。Nさんは納得のいく治療を受けたかったので、淡々と必要な手続きを進めたそうです。
※ダンピング症候群:胃の切除で食べ物が急速に小腸に流れ込むことで起こるさまざまな症状。時間の経過とともに軽快することが多いが、数年経ってもみられる場合もある。
セカンドオピニオンは、治療を深く理解するきっかけになります
がんと診断・告知を受けた直後は、誰でも混乱と激しい不安に見舞われます。すぐに気持ちが切り替えられず、言われるままに治療を受け入れ、あとから「ああすればよかった」「こっちの方法もあった」と後悔することは珍しくありません。
一方、セカンドオピニオンを受けるメリットの1つは、がんという病気について改めて向き合うことです。セカンドオピニオンを受ける準備をするプロセスで、自分自身が主体的に動き、検査結果や診断、治療方針の根拠、今後の見通しを改めて理解する必要があります。このときに「自分は○○したくない。こうしたい」という自身の生活で優先したい要望や、「主治医の先生が言っていた△△って、どういう意味だろう」という疑問が湧き上がってくると思います。
セカンドオピニオンは主治医のファーストオピニオンをわかりやすく解説してくれる場でもあります。主治医から提示された治療方針について主治医とは違う言葉でデメリットとメリットを解説してもらうことで、治療に対する理解がより深まるでしょう。
主治医と一緒にやっていけるかの試金石にもなります
もし、セカンドオピニオンを申し出た際に「私が信頼できないというなら、転院してください」など、心ない言葉を投げられた場合は、まず、がん相談支援センターに苦情を申し立ててください。
そのうえで主治医をかえてもらったり、場合によっては転院を申し出たりしてもよいと思います。その際は家族やがん相談支援センターのスタッフに間に入ってもらいながら、きちんと転院手続きをとりましょう。セカンドオピニオンは、長く続くがん治療の道のりを主治医と一緒に歩んでいけるかどうかを判断する試金石にもなるといえるかもしれません。
- 監修:
- 埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター 精神腫瘍科
教授 大西 秀樹 先生