治療

外見の変化
〜38歳女性 乳がんの場合〜

Wさん:38歳 女性 乳がん・ステージⅢ
兼業主婦。夫と小学生の長女、幼稚園の長男の四人暮らし。

職場の健診で乳がんが見つかりました。すぐに切除し、現在はホルモン療法中です。切除後、乳房再建術を希望しましたが、人工乳房(乳房インプラント)の発がん問題から中止となりました。

38歳女性

「乳房再建術の中止は、想像以上にショックでした」

「乳房を切除したあとは、手術で再建する予定でした」というWさん。しかし2019年、日本で認可されていた「乳房インプラント(乳房に入れるシリコン)」が自主回収されたことから、主治医と話し合い乳房再建術を中止することにしました。「“再建するんだから大丈夫”と、自分自身を慰めていたのでとてもショックでした。何をしていても変化したままの乳房のことが頭から離れませんでした」(Wさん)。

乳房を失うことで生じるさまざまな葛藤に対する対処法

女性にとって乳房を傷つけることは、女性性をゆるがす大きな出来事です。手術後は変化した自分の身体をどう受けとめたらよいのかわからず、自分の身体に対する違和感や、ときには嫌悪感が湧くこともあるかもしれません。

人間は難しいもので「意識してはいけない」と思うと、かえって意識してしまうようです。ネガティブな気持ちも含めて、身近な家族や友人に素直な気持ちを打ち明けてみてください。家族に遠慮してしまうときや、眠れない、何をしても楽しくないなどの辛い気分が長く続くときは、がん相談支援センターや看護師、サイコオンコロジスト(精神腫瘍医)に声をかけてください。

誰かに気持ちを打ち明けることに抵抗がある方は、自分は今までどんな形でストレスに対応してきただろう、と考えてみるのもよいでしょう。これまでに経験してきたさまざまなライフイベント──、受験、就職、結婚、妊娠、出産、あるいは親しい人との別れなど、大きなストレスに直面したとき、あなたはどう対処してきたでしょうか。

乳房の補整は外見だけでなく、色々な意味があります

また、おしゃれなインナーを選ぶことも女性としての自分を元気づける方法の一つです。最近は術後も安心して着けられる素材を使った素敵なデザインのインナーが増えてきました。術式別(全摘、温存、再建など)や、放射線治療・抗がん剤治療などの治療別にインナーを提案してくれる専業メーカーもあるので、がん相談支援センターや乳腺外科、インターネットなどで情報を収集してみてください。

軟らかい天然素材のもの、おしゃれなレース素材のもの、華やかな色合いのもの、楽を追求したものなどを心身の変化に合わせて選ぶうちに、人生は1歩ずつ進んでいきます。

インターネットなどで情報を収集

また、実生活において、乳房を切除した後は左右のバランスが取りづらくなることがあります。姿勢が悪くなるほか、左右差をカバーしようとして肩こりや腰痛を起こすため、補整下着や補整用のパッドを上手に利用しましょう。身体が楽になってくるにつれて、見た目の変化を許せるようになるほか、自分で自分の心身をコントロールしているという感覚を取り戻すことができると思います。

監修:
国立がん研究センター東病院 精神腫瘍科
科長 小川 朝生 先生

(2023年4月作成)

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