がん患者さんでは、筋肉の減少や筋力の低下を起こしやすいとされています(詳しくは下記【コラム】筋肉の減少とは 参照)。
進行がんの約半数の患者さんで筋肉の減少が認められ1)~3)、それに伴って運動機能の低下やQOL(生活の質)の悪化がみられます。また、筋肉の減少は、倦怠感を生じる原因にもなります。特にがん悪液質では筋肉の減少が早い段階からみられ、日常の活動に支障を来したり、体力が消耗しやすくなります(詳しくは下記【コラム】「がん悪液質」とは 参照)。さらに、筋肉の減少は、がん患者さんの治療の継続にも大きく影響します。
体重だけでなく筋肉に対しても留意し、筋肉の減少に対する早期の対策が大切です。
【コラム】筋肉の減少とは
- 筋肉は体重の40~50%4)を占める人体最大の器官です。筋肉の収縮によって身体を動かすだけでなく、たんぱく質の代謝において中心的な役割を果たしています。
- 筋肉やたんぱく質の減少は、身体機能の低下にとどまらず、免疫力の低下や様々な臓器への影響が生じ、生命が脅かされることもあります。
【コラム】「がん悪液質」とは
がんになると、食欲不振や体重減少などが起こりますが、原因の一つにがん悪液質があります。がん悪液質では主にがんがつくり出す「サイトカイン」という物質によって、たんぱく質、炭水化物、脂肪などの代謝に異常が起こります。その結果、筋肉量や脂肪量が減少することで体重が減ってきます。
筋肉減少を防ぐための工夫
- 体重減少に注意し、こまめに体重を測りましょう。
- 食欲がない時や食べられない時は医療者に相談しましょう。
- 筋肉を維持するには運動が有効です。ご自身に合った無理のない運動を習慣づけましょう。
- 参考
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- 田村和夫ほか 編:がん患者の症状 まるわかりBOOK、照林社、2018年
- 日本緩和医療学会 編:専門家をめざす人のための緩和医療学 改訂第3版、南江堂、2024年
- 東口髙志 編:やさしいがん患者の代謝と栄養管理~病態の変化にそった実践法~、 医薬ジャーナル社、2017年
- 丸山道生 編:癌と臨床栄養2版、日本医事新報社、2016年
- 引用
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- 1)Academy of Nutrition and Dietetics. EVIDENCE ANALYSIS LIBRARY ONC: NUTRITION ASSESSMENT FOR ADULT ONCOLOGY PATIENTS(2013)
- 2)Cushen SJ, et al. Top Clin Nutr 2015; 30(1): 103-119.
- 3)de van der Schueren M, et al. Ann N Y Acad Sci 2014; 1321: 20-40.
- 4)森 直治 他. 臨床栄養. 2016; 129(4): 534-540.
- 監修:
- 京都府立医科大学大学院医学研究科 呼吸器内科学
教授 髙山浩一先生