事例①:ざ瘡(そう)様皮疹や爪の変色があり、人前に出たくない
~45歳・男性・会社員(営業職)の場合~

がん治療による外見の変化で、
職場の人間関係はぎくしゃくした?

13.0%

の人がはい

10人中1人がぎくしゃくしたと回答しました。

営業などの人前に出る職種では、外見を今まで通りに装うことはとても重要だと思うのではないでしょうか?
しかし、外見が変わってしまっても、他の部分でカバーできることを知ってもらいたいです。

お医者さんのイラスト

[調査方法]日本における性別・部位別のがん罹患率の割合を可能な限り反映できるよう、オンライン調査会社に登録された調査対象者から無作為に選び、1,000名以上の有効回答が得られるまで、匿名の自記式調査をインターネットで行いました。本調査は2018年3月2日から22日まで実施し、1,034名(男性518名、女性516名)の回答が得られました。

Nozawa K et al. Global Health & Medicine 2023;5(1):54-61.

AJさん:45歳 男性
職業:会社員(営業職)
疾患:大腸がん

入社以来、ずっと営業職として働いてきました。大腸がんの手術後に復職しましたが、抗がん剤の影響でざ瘡様皮疹ができてしまい、顔全体が赤くみえます。薬を塗ってもなかなか改善しないため、人と顔を合わせるのが苦痛になってしまいました。爪の変色もあり、お客さんの前で手を出すのも恥ずかしいので、内勤に異動させてもらおうかとも思いましたが、営業の仕事にやりがいを感じており、決心がつきません。

鏡を見る男性のイラスト

皮膚障害は、洗顔や保湿などの基本的なスキンケアが大切

抗がん剤の影響で頻発することがあるざ瘡様皮疹1)は、「にきび」様の皮疹のことで、頭部や顔、前胸部、背中などに紅色丘疹(赤にきび)や膿疱(のうほう:膿がたまったにきび)がみられるのが特徴です。

ざ瘡様皮疹が顔に発症すると、とても目立つため、外に出たくない、人に会いたくないという声をよく聞きます。でも、大腸がんで使われる分子標的治療薬のように、皮疹の多さと抗がん剤の効果が関係するものも少なくありません1)。治療を継続できるように、まず、病院で出された保湿剤やステロイドをしっかり使います1)。その上で、AJさんのような赤みが気になる場合は、赤みの強いところを中心に粉(フェイスパウダーなど)をはたくだけでも、赤みが減って、かなり印象が変わります。もちろん、メイクテクニックを駆使して隠す方法もありますが、男性やお化粧慣れしていない女性にとって、逆に厚化粧的な違和感を強くもつことになるので、あまりおすすめできません。カバーメイクをしっかり行いたい方は「医療用ファンデーション」などで検索すると、カバーメイクに関して充実したホームページをもつ化粧品会社を複数見つけることができます。

よく、触ると痛いからといって、顔を洗わず、薬や保湿剤を塗り重ねている方がいらっしゃいますが、汗や皮脂、汚れの上からいくら薬を塗っても浸透せず、症状は改善しません。ざ瘡を治すためには、「きちんと汚れを取り除き、皮膚を清潔に保つ」、そして、「皮膚に潤いを与える」という、基本的なスキンケアが何よりも重要です。とくに、軟膏(なんこう)などの外用薬を使用している場合は、洗顔料をよく泡立てて、皮膚に残った薬を丁寧に落とすことから始めましょう。

特別なものではなく、自分に合ったスキンケア用品を選ぶ

洗顔や保湿というと、「どんな製品を使えばよいですか」とよく質問されますが、自分に合った洗顔料や化粧水を使ってもらって大丈夫です。保湿剤が処方されている方も、潤いが足りないと思えば、市販の保湿剤を追加してつけても構いませんし、そのくらい臨機応変に対処して問題はないとお考えください。

市販のスキンケア用品で、「無添加」や「敏感肌用」などと表示されているものは、明確な定義や科学的根拠が乏しく、「弱酸性」にこだわりすぎなくても大丈夫です。値段の高い安いも気にすることはありませんので、これまで使用していたものをそのまま使用してもよいですし、いろいろ試してみて、自分に合ったスキンケア用品を選んでください。がんだからといって、特別なスキンケア用品を購入する必要はありません。

目につきやすい爪は、対人関係や心持ちに影響する

爪の変化・変色も、抗がん剤の副作用で生じやすい症状です2)。爪は人目に触れやすく、自分からもよく見えるため、爪の色が悪いと、人の目が気になってしまう方も多いと思います。

爪の変色は、市販のネイルカラー(マニキュア)で、カモフラージュする方法をおすすめします。爪の色は人によって異なるため、自分の爪に合ったカラーを選ぶようにしましょう。マットのトップコートを塗って仕上げると、つやが消え、より自然に見せることができます。最近では、男性の方も抵抗感なく、マニキュアを使用されていることがあります。爪を健康的に見せる方法の1つとして、ぜひ、試していただければと思います。

どうしても、爪や手を隠したいときは、状況によって手袋をするという選択肢もあります。その場合は、「かぶれがひどくて、手をお見せできないので…」などと言っておけば、それ以上、質問されることもないと思います。

顔や爪に外見の変化があっても、他の部分でカバーできる

がんの治療の副作用で、ざ瘡ができることを知っている方は、多くはありません。ほとんどの方は、「吹き出物が出やすい人なのかな」くらいにしか思いません。ですから、もちろん、がんであることを伝える必要もありません。「にきびがひどくなってしまって…」と説明すれば、周囲の人も納得してくれるはずです。

ざ瘡様皮疹などの皮膚障害や、爪の変化・変色といった人目につきやすい変化があると、人と接するのが嫌になり、会話中も下を向いたり、口数が減ってしまったりします。むしろ、そうした態度が、周囲の人に、「変わった」という違和感を与えてしまうのです。外見の一部に変化があっても、表情、肌のつや、服装、姿勢、声など、ほかの部分を健康的にすることで、カバーすることができます。そして、何より、仕事ぶりがこれまでと変わらなければ、周囲の人はすぐに気にしなくなるものです。

職場は仕事をするところです。意識しすぎたり、自信を失ったりしていると、周囲にこれまでと違う印象を与えてしまいます。仕事ぶりが同じこと、それが一番重要だということを覚えておいていただければと思います。

  • 1) 野澤桂子, 藤間勝子編:臨床で活かす がん患者のアピアランスケア 改訂2版, p109-117, 南山堂, 2024年
  • 2) 野澤桂子, 藤間勝子編:臨床で活かす がん患者のアピアランスケア 改訂2版, p166-175, 南山堂, 2024年
監修:
  • 目白大学 看護学部看護学科 教授
    (臨床心理士・公認心理師)
    野澤桂子 先生

(2023年3月作成)
(2024年3月更新)