6放射線療法について

放射線療法とは、どのような治療法ですか?

高エネルギーのX線などを使ってがん細胞を死滅させたり、増殖を抑える治療法です。手術や薬物療法と併用されることもあります。

頭頸部がんは、放射線療法の効果が高い「扁平上皮がん」が多いことが知られています。また、放射線療法は、治療後も臓器の機能や形態が温存されやすく、治療後の容貌ようぼう変化、発声や咀嚼そしゃく・嚥下機能などの低下が少ないことから、手術とともに、頭頸部がんに対する治療の中心として用いられています。

治療の種類と進め方

治療方法には、外から放射線を照射する「外照射法」と、放射線の出る物質を病巣やその周囲に入れて体の中から放射線を当てる「組織内照射法」の2種類がありますが、広く用いられているのは外照射法です。放射線単独で根治治療として用いられるほか、効果の増強を目指して抗がん剤と組み合わせて行われることもあります。また手術のあとの補助治療として、転移巣の痛みなどを和らげる緩和治療としても行われます。

治療スケジュール

スケジュールは、治療の目的やがんの種類ごとに立てられた治療計画をもとに進められます。通常、1回の照射にかかる時間は数分で、痛みはありません。ただし、治療を中断すると十分な効果が得られなくなりますので、職場や家庭での協力を得るなどして、できるだけ治療を継続できる環境を整えておくとよいでしょう。

放射線療法

放射線療法の主な副作用

放射線療法の副作用には、「急性期」に現れるものと、「晩期」に現れる副作用に分けられます。副作用の程度は個人差がありますが、急性期に起こる副作用の多くは、治療後3ヵ月までには軽快します。
予想される副作用や後遺症などについては、あらかじめ、放射線療法の担当医や医療スタッフによく確認しておくとよいでしょう。

放射線療法でみられる主な副作用

急性期の副作用(照射後3ヵ月以内に発症するもの)
  • 皮膚炎
  • 口腔や咽頭の粘膜炎
  • 唾液の分泌障害や口腔乾燥
  • 味覚障害
  • など
喉に違和感を感じている患者さん
晩期の副作用(照射後6ヵ月~数年以内に発症するもの)
  • 皮膚が硬くなる
  • 唾液の分泌障害や口腔乾燥
  • 味覚障害
  • 摂食嚥下せっしょくえんげ障害
  • 軟骨や下顎骨かがくこつの炎症
  • など

※薬物療法と併用する場合(化学放射線療法)では、皮膚症状や粘膜炎などの副作用が強く現れることがあります。

日本頭頸部癌学会ホームページ「放射線治療」
頭頸部がんの化学放射線療法, p38-40. 日本看護協会出版会, 2015
国立がん研究センターがん情報サービス「放射線治療の実際」
日本臨床腫瘍学会編:頭頸部がん薬物療法ガイダンス 第2版, p25. 金原出版, 2018
監修:
国立がん研究センター東病院
副院長 頭頸部外科
林 隆一 先生

 

(2023年4月作成)