1頭頸部がんについて

どのような症状が現れますか?

がんが発生した部位によって異なります。初期では、がんそのものの症状に乏しく、見逃されやすい傾向があります。

頭頸部がんでみられる症状は様々です。
主な症状としては、口内炎こうないえんのような症状が治らない(口腔がん)、のどの違和感や飲み込みの悪さ(咽頭がん)、声のかすれ(喉頭がん)、首に痛みのない固いしこりがある(頭頸部がん共通)、などがあります。
頭頸部がんの多くは初期症状が少なく、また異常があってもがん特有の症状に乏しいことから、見逃されやすい傾向があります。このため、初診時では、半数以上の方が進行した状態で見つかっています。

初診時での進行程度1)

初診時での進行程度
1)日本臨床腫瘍学会編:新臨床腫瘍学 改訂第5版, p400. 南江堂, 2018 より作成

頭頸部がんの種類と主な症状

がんの種類
[全体の割合1)
特徴 主な症状
口腔がん
[26.3%]
舌がんが半数以上を占める。中高年の男性に多いが20歳代でも発症することがある。
  • 食事がしみる
  • 口内炎のような症状が続く
  • 首のリンパ節のれやしこり
など
上咽頭がん
(鼻の奥の方)
[3%]
EBウイルス感染ががんの発生に関わり、若者にもみられる。構造上手術が難しく、放射線への感受性が高い部位のため、放射線療法が中心となる。
  • 鼻づまり、鼻出血
  • 耳がつまった感じ、聞こえにくい
  • 目が見えにくい、物が二重に見える
など
中咽頭がん
扁桃へんとう腺周辺)
[16.5%]
若者で増加傾向を示す。
背景としてHPVとの関連が指摘されている。
  • 飲み込むときの違和感
  • のどにしみる感じ
  • のどの痛み、血痰けったんが出る
  • 首のリンパ節の腫れやしこり
など
下咽頭がん
(食道の入口)
[20.0%]
中年期の男性に多いが、一部のタイプでは鉄欠乏性貧血の女性にもみられる。
  • 飲み込むときの異物感
  • のどにしみる感じ、血痰が出る
  • 耳の周りの痛み、声がれ
  • 首のリンパ節の腫れやしこり
など
喉頭がん
(声門)
[21.3%]
中年期の男性に多く男女比は10:1。
特に喫煙と深い関係がある。手術に際しては、声を残せるかが重要な判断基準になる。
  • 声がかすれる
  • 飲み込むときの痛み、飲み込みにくい
  • 血痰が出る
  • 首のリンパ節の腫れやしこり
など
鼻・副鼻腔がん
[7.1%]
以前は多かったが、近年は減少傾向にある。
男性に多く高齢者にみられる。
  • 鼻づまり、鼻出血、鼻水
  • 進行すると、がんが広がる方向によって眼球突出、歯痛、口蓋こうがいが腫れる
など
唾液腺がん
[5.9%]
耳下腺がんの割合が最も多い。
  • 耳の下や前部の腫れや痛み
  • 顔面神経の麻痺まひ
  • 舌のしびれや痛み
など
スクロールアイコン
※甲状腺がんについては、「甲状腺癌取扱い規約」に基づいて行われるため除外しています。 1)日本頭頸部癌学会による全国登録(2014年度)
日本臨床腫瘍学会編:新臨床腫瘍学 改訂第5版, p400. 南江堂, 2018
監修:
国立がん研究センター東病院
副院長 頭頸部外科
林 隆一 先生

(2023年4月作成)