小野薬品の薬をご使用の方向け情報

原発不明がんの治療でオプジーボを使用された方へ

オプジーボ(一般名:ニボルマブ)は、私たちがもともと持っている免疫の力を回復させることでがんへの攻撃力を高める、これまでとは異なるメカニズムに基づく〝がん免疫療法〟の治療薬です。

原発不明がんの特徴と薬物療法

原発不明がんとは、十分な精密検査を行っても最初にがんが発生した部位(原発巣)がはっきりせず、転移した病巣だけが判明しているがんをいいます。
原発不明がんでは、見つかった時点ですでにがんが転移した状態です。このため、多くの場合、手術などの局所治療で体内に広がったがん細胞を完全に取り除くことは難しく、全身に作用する薬物療法を中心とした治療が行われます。
薬物療法については、〝がんと免疫〟に関する研究が進み、これまでとは異なる作用を持つ「がん免疫療法」が開発され、治療の選択肢が広がりました※※
がん免疫療法の薬は、そのメカニズムから「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれています。

※転移:がん細胞が最初に発生した場所から血管やリンパ管に入り込み、血液やリンパの流れにのって別の臓器や器官に移動し、そこで増えることをいいます。 ※※オプジーボによる治療の対象となる方(原発不明がん)についてはこちらをご参照ください。
がん免疫療法
国立がん研究センター 希少がんセンター「原発不明がん」
オプジーボ電子添文 2024年2月改訂(第20版)

「がん免疫療法」「免疫チェックポイント阻害薬」について詳細をみる

がん免疫とは

オプジーボとは

◆ブレーキを外してT細胞の免疫力を回復させ、がん細胞への攻撃を助ける治療薬です。
オプジーボは、T細胞にかけられた免疫のブレーキを解除する働きがある「免疫チェックポイント阻害薬」です。
オプジーボは、血液に入ると「PD-1」と呼ばれるT細胞のアンテナに結びつくことで、抑制信号をブロックし、免疫のブレーキを外します。
こうしたオプジーボの作用によってT細胞は、妨害を受けることなく、再びがん細胞を攻撃できるようになるのです。

オプジーボについて詳細をみる

小野薬品の薬を使用された方へ
オプジーボ

オプジーボによる治療の対象となる方

◆適切な精密検査を実施したうえで「原発不明がん」と診断された方のうち、推奨される治療法がない患者さん※※が対象となります。

原発不明がん診療ガイドラインなど最新の情報を参考とした問診、診察、画像検査、病理検査など
※※ 原発臓器が不明な上皮性悪性腫瘍(下記 用語集参照)の患者さんに限られます。

オプジーボによる治療を受けることができない患者さん

オプジーボに含まれている成分に対して、以前、アレルギー反応(気管支けいれん、全身性の皮膚症状、低血圧など)を起こしたことがある方は、さらに重いアレルギー反応が出る可能性があるため、オプジーボによる治療は受けられません。

オプジーボによる治療を慎重に検討する必要がある患者さん

次のような方は、オプジーボによる治療を受けられないことがあります。

  • ◎自己免疫疾患にかかったことがある方
  • ◎間質性肺疾患**にかかったことがある方
  • ◎臓器移植(造血幹細胞移植を含む)を受けたことがある方
  • ◎結核にかかったことがある(発症する恐れがある)方
自己免疫疾患
免疫機能が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気で、関節リウマチや1型糖尿病などが自己免疫疾患に含まれます。
**オプジーボの特に注意すべき副作用をご参照ください。
オプジーボ電子添文 2024年2月改訂(第20版)

治療の進め方と投与方法

◆オプジーボは、30分以上かけて点滴で投与します。

◆治療スケジュールは、2週間(14日間)ごとに1回投与する方法と、4週間(28日間)ごとに1回投与する方法の2種類あります。

治療スケジュールについては、主治医にご確認ください。

投与スケジュール
オプジーボ電子添文 2024年2月改訂(第20版)より作成

オプジーボの特に注意すべき副作用、注意が必要なその他の副作用、ご注意

オプジーボによる治療中には、副作用が現れることがあるので注意が必要です。下記リンクから詳細をご確認ください。

オプジーボ治療Q&A

治療終了後の注意点

◆副作用は、治療期間中だけでなく、治療終了後にも現れることがあります。

副作用が発現しても、早期に見つけて適切な対処を行えば、重症化を防ぐことにつながります。治療が終わったあとも、気になる症状が現れた場合はご自分で対処せず、すぐに医師や看護師、薬剤師に連絡してください。

◎適切な治療のために

「オプジーボ連絡カード」

  • オプジーボによる治療を受けている(受けていた)ことを医療者に知らせる携帯用のカードです。
  • 他の病院を受診したり薬局でお薬を処方してもらう際は、このカードを必ずご提示ください。財布などに入れて常に携帯しておきましょう。
オプジーボ連絡カード

「おくすり手帳シール」

  • おくすり手帳に貼っておくことで、医療者に副作用への注意や相互作用の確認などを促すシールです。
  • 確認しやすいページに貼ってお使いください。
免疫チェックポイント阻害薬

緊急時の病院への連絡について

◆緊急受診が必要になった場合に備えて次の点を確認しておきましょう。

オプジーボの治療期間中や治療後に、病院への緊急連絡や緊急受診が必要になることがあるかもしれません。そのための備えとして、次の点を確認しておきましょう(緊急連絡先の電話番号は、目につくところに置いておくことも大切です)。

◎緊急連絡・受診の備えとして確認しておきたいこと

  • 病院の連絡先(夜間の連絡先)の電話番号
  • 病院に向かうための交通手段
  • 付き添いが必要な場合の支援方法と連絡先

(あわてなくて済むように、あらかじめ書き留めておきましょう)

緊急時の病院への連絡

◎病院に連絡する際に伝えておきたいこと

  • 患者さんの氏名、診察券の番号
  • 通院している診療科
  • オプジーボによる治療を受けている(受けていた)こと
  • いつから、どのような症状が出ているのか
  • その症状で、どんなことに困っているか

(電話する際は、診察券を手元においておくとよいでしょう)

用語集

原発巣
最初にがんが発生した病変のことを「原発巣」と呼びます。原発巣がはっきりしている場合は通常、肺がん、胃がん、大腸がんのように発生した臓器の名前がついた診断名がつけられます。しかし、原発不明がんのように、適切な精密検査を実施したにもかかわらず原発巣が判明しないがんもあります。
転移
がん細胞は血流やリンパの流れにのって体内を移動し、流れ着いた先で増殖します。これを「転移」といいます。原発不明がんは、転移した病巣だけが判明しているがんで、リンパ節、肝臓、骨、肺などで多くみつかっています。
上皮性悪性腫瘍
消化管や気道などの内側や体の表面、臓器などをおおう上皮細胞から発生する悪性腫瘍を「上皮性悪性腫瘍」といいます。肺がん、乳がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、頭頸部がんなどは上皮性悪性腫瘍です(血液のがん、骨や筋肉のがん、中皮腫は含まれません)。
T細胞
血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種で、異物から体を守る司令塔となる細胞です。T 細胞という名前は、胸腺(thymus)でつくられることから、頭文字のTを取って名付けられています。
免疫チェックポイント阻害薬
免疫チェックポイントと呼ばれている免疫のブレーキ役の部分に結合する抗体(抗PD-1抗体など)を用いて、がん細胞による免疫のブレーキを外し、がん細胞への攻撃力を回復させる治療薬です。
1型糖尿病
主に自己免疫によって起こる病気で、自分の体のリンパ球が膵臓にある膵島β細胞を破壊してしまうことで発病します。遺伝的な要因に運動不足や食べ過ぎなどの生活習慣が加わって発症する「2型糖尿病」とは発症原因が異なります。
アナフィラキシー
アレルギーの原因になる物質が侵入することで引き起こされる全身的なアレルギー反応をいいます。全身の発疹やかゆみ、呼吸困難などの症状が急速に現れ(数分~数時間以内)、重症になると生命に危険が及ぶこともあるため、迅速な対応が必要となります。
国立がん研究センター がん情報サービス「がんに関する用語集/がんという病気について/薬物療法」
カラー図解人体の正常構造と機能Ⅶ 血液・免疫・内分泌 改訂第4版, p32, 日本医事新報社, 2021
日本糖尿病学会編:糖尿病診療ガイドライン2019, p10-11, 南江堂, 2019
日本臨床腫瘍薬学会編:臨床腫瘍薬学 第2版, p731-740, じほう, 2022

オプジーボ治療日誌

オプジーボによる治療中、特に気をつけていただきたい症状をチェック項目としてまとめています。

監修:
近畿大学病院 がんセンター 特任教授
がんセンター長 中川 和彦 先生

(2024年6月作成)