Step1.免疫のはたらきとがん
2がんと免疫 - 免疫から逃れるがん
免疫の目をくらませるがん細胞
正常な細胞が変化してできたがん細胞は、その細胞の表面に目印(がん抗原と呼ばれるタンパク質)を持っています。免疫細胞は、この目印を見つけると、がん細胞を自分ではないもの(異物)とみなして攻撃します。すなわち、免疫細胞は、この目印がないとがん細胞を見つけることができません。そこで、がん細胞はこのような免疫の性質を逆手にとって、この目印を隠して身を潜め、免疫細胞による攻撃から逃れているのです。

がん細胞にある「がん抗原」とよばれるタンパク質が、がん細胞の表面に位置して、「私(この細胞)はがん細胞です」ということを免疫細胞に伝えるための目印になっていると、がん細胞は免疫細胞からの攻撃を受けやすくなります。
免疫のはたらきをブロックするがん細胞
さらに、がん細胞は、自分の目印を隠すだけではなく、免疫がうまくはたらかなくなるような物質を出したり、免疫の働きをブロックする細胞が増えたりすることによって免疫のはたらきをブロックしています。こうして、がん細胞のまわりの環境を変えることも、「がん」が生き延びるための作戦のひとつなのです。

- 監修:
- 慶應義塾大学 医学部 先端医科学研究所
所長 細胞情報研究部門
河上 裕 先生