診断・告知

家族への周知の悩み
~皆さまへ~

子ども達も、あなたを支える家族の一員です

がんと告げられたあとで、お子さんや両親にどう伝えたらいいのかわからず途方にくれて「心配をさせたくないから、知らせないでおこう」と思うかもしれません。

ただ、毎日を一緒に過ごす家族の中で、何かを隠し続けるのは思った以上に難しいものです。子ども達は大人が考える以上に敏感で、誰に言われなくても家の中でいつもと違う何かが進行していることに気づくことがあるでしょう。

そして何も知らされないことで「僕が、私が、何か悪いことをしたんだろうか」「お父さんとお母さんは自分が嫌いなんだろうか」と悪い方へと想像を膨らませ、一人ぼっちで不安を募らせてしまいます。不安から怒りや悲しみが生まれ、反抗的な態度をとるかもしれません。

子ども達も家族の一員です。病気のことをわかりやすく伝えながら、子ども達の怒りや悲しみの感情を解放し「僕も、私もここに居ていいんだ」「今すぐ何かが壊れるわけではないんだ」という安心と、お父さん、お母さんから信頼されているという誇りを取り戻してあげてください。

一度にすべて話す必要はありませんし、もしかすると「聞きたくない」と言うかもしれません。そんなときは無理をさせずに、「話を聞きたくなったら、いつでも言ってね」と伝えてください。新しい状況を受け止める力は、大人よりも子どもの方が長けているものです。あなた(患者さん)を支える日々の中で子ども達の居場所をつくることは、あなたと子ども達の不安と不要なストレスを減らし、落ち着いて治療に向かう力になると思います。

子供も一員

「がんである」こと、「誰のせいでもない」ことを伝えましょう

子どもに話をするときは、次のことに気を配るとよいでしょう。

一つ目はきちんと「がんである」と伝えること。病気という曖昧な表現をして「すぐに治る病気だ」と思い込んでしまうと、これから先に続く親の入院や手術のたびに混乱してしまうでしょう。

二つ目は「誰のせいでもない」と言うこと。小さなお子さんは「自分が悪い子だから、お母さん(お父さん)が病気になったんだ」と罪悪感を抱いてしまうこともあります。思春期真っ只中の中学生、高校生なら「反抗して、ストレスをかけたせいだ」と自分を責めてしまうかもしれません。病気は誰のせいでもないこと、何かをした、あるいはしなかったから、がんになったのではないことを伝えてください。

子ども達の年齢や理解力に応じて、具体的にがんがどこにあるのか、治療が進むと子ども達の生活にはどんな影響があるのかを伝えてください。小学生くらいのお子さんは、素直にあれこれ聞いてくるかもしれません。話をする前に回答を準備しておくとよいと思います。

思春期の子どもの反応はさまざまです。この年頃の子どもは、自分のことで精一杯な面があり、わざと無関心を装ったり、「どうして今なの?よりによってがんなの?」と理不尽に怒りをぶつけてくることもあるでしょう。辛いかもしれませんが、それも不安や恐怖の表現だと受け止め、「時々は不自由をかけるかもしれないけれど、お父さん/お母さんがちゃんとあなたの面倒をみるからね」と伝えてください。

「年老いた親に心配をかけたくない」

「年老いた親には心配をかけたくない」と、考える方は多いと思います。確かに一定の年齢以上の方は「がんは不治の病」というイメージを持っていることが多く、こちらが予想した以上にショックを受けてしまうかもしれません。遠方に住んでいるなら、なおさら心配はかけたくないでしょう。またもし、ご両親自身が何かの病気や障害で弱っておられるようなときは、伝えないというのも一つの選択肢だと思います。

ただ「伝えないこと」が本当の優しさなのかどうか、もう一度考えてみてください。親の立場にたってみて、我が子の大変な出来事を他人から知らされたり、あとから隠し事をされていたと知ったりしたらどうでしょうか。「なぜ教えてくれなかったのか」と傷つき、悲しまれると思います。また、親としてケアを行う機会を失うことにもなります。

タイミングを見計らいながら、治療の見通しがある程度たってから伝えたり、状況がわかりやすいように入退院や検査結果が出た時点で話をするなど工夫してみてください。

自分から伝えることが難しいときは、あなたが信頼できる配偶者や兄弟姉妹、親戚や友人、またはがん相談支援センターの相談員に相談してみるのもよいと思います。

監修:
埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター 精神腫瘍科
教授 大西 秀樹 先生

(2023年4月作成)

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