再発後の治療

再発、再々発への対応
~66歳男性 大腸がんの複数回再発転移の場合~

TTさん:66歳 男性 大腸がんの複数回再発転移
妻と二人暮らし。一男一女はそれぞれ遠方で独立している。

3年前に大腸がんと診断され、手術を受けた1年半後に、局所再発で再度手術を受けました。その半年後、肝臓に再々発(遠隔転移)が見つかったため再び切除術を受けましたが、その3ヵ月後に肺と肝臓に転移が見つかりました。

66歳男性

「治療に励んだのに、3回目の再発で腹が立つやら情けないやら」

大腸がんでは再発・転移したがんを手術で取り除ける場合は手術しますが、手術が難しい場合は薬物療法や放射線療法が選択肢になり、薬物療法は最初の薬の効き目が薄れた後も他の薬に切り替えることで延命を期待することができます1)

「1回目の再発の際に、治療に専念するためにせっかく嘱託で続けていた仕事を辞めました。そして、2回目の再発の際に、これを飲んだらがんがきれいに消えるという高価な健康食品も購入するようになりました。それなのに3度目ですよ。腹が立って、情けなくて、“治療しても健康に気をつかっても再発したじゃないか”と妻に八つ当たりしました」(TTさん)。

「再発の事実を受け入れるようにしたら、心境が変化しました」

残念ですが今現在の医療で、がんの再発を100%防ぐことはできません。再発予防をうたう様々な補完代替療法(健康食品やサプリメント、マッサージなど)や食事療法(マクロビオティックやビーガンなど)を見聞きするかもしれませんが、科学的に証明された方法は未だに発見されていません。その事実はときに希望がなくなったようで患者さんとご家族を打ちのめすことがあります。また、将来が見通せない絶望感や怒り、がんになったことを否定したい気持ちがわき上がってくることもあるでしょう。

どうがんばっても今、ここにある「がん」をなかったことにすることはできません。また、主治医を含めて誰にもがんの進行がもたらすかもしれない将来を確信をもって教えることはできないのです。先が見通しにくい状況は泣きたいほどにつらいと思います。それでも何とか踏ん張って、足元をしっかり見つめながら今できる最善のことを一歩一歩、着実に進めていきましょう。人間は最悪の事態に直面しても、心の奥底に希望を信じる力を秘めています。

TTさんはあれこれ思い煩う気持ちを切り替えるために、目の前の変えられない事実を受け入れ、「この事実を変えたい」「無かったことにしたい」という執着を手放してみようと意識してみました。「つまり、できるだけ考えないようにしたんです。考え始めたら意識してテレビを見たり、趣味の盆栽をしたりしました。そうしたら“どんなに否定してもがんは体の中にあるんだから”“治療法があるだけありがたい”と開き直った心境になり、治療に前向きになりました」と静かに話してくれました。

執着を手放してみようと意識

ただし、落ち込みや否定の気持ちが強く自分一人では抜け出せないようなときは、サイコオンコロジスト(精神腫瘍医や公認心理師など)といった心の専門家の助けが必要です。人は支え合って生きていきます。サイコオンコロジストの力を借りることは健やかに生きる上でとても大切なことです。

1) 大腸癌研究会 編. 患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2022年版, 2 大腸癌治療ガイドラインの解説, 金原出版
監修:
大阪国際がんセンター 心療・緩和科(精神腫瘍科)
部長 和田 信 先生

(2023年4月作成)

再発、再々発への対応